ある日のある人、午前6時、前半

alternative coffee brewing in cafeある日のある人

その人は、コーヒー豆を擦りながら6時を迎えた。

台所の片付けが終わると、コーヒーの準備に取り掛かる。電気ケトルに浄水器から水を入れる。だいたい、1リットルのラインが目安になっている。コーヒーだけでなく、日中に飲むお茶を入れる水筒のためにもお湯を沸かす。重くなったケトルをスタンドに戻し、スイッチを入れた。

電気ケトルの横に置いてあるコーヒーミルを手に取り、キッチンの天板の上に置く。

冷凍庫から、黄色いブリキのキャニスターを取り出し、キッチンの天板の上に置く。コーヒーミルが手前、キャニスターが奥になるように並べた。キャニスターの蓋を開け、中蓋を開ける。中蓋は少し錆びている。キャニスターが冷えているためか、結露し、水滴がつく。キャニスターの中から、ネット通販で購入した1kg4,500円ほどのコーヒー豆を取り出し、ミルの上部にスプーン3杯を入れた。3杯目はその前の2杯に比べ、少し多くの豆が入った。

ダイニングの自分の席まで歩き、椅子に座って、ミルのハンドルを回す。午前6時から番組が切り替わり、キャスターが変わったが、午前5時と同じようなニュースが流れていた。相変わらず見ているのか見ていないのか曖昧な状態でテレビを眺めながら、ミルのハンドルを回し続けた。

突然、ミルのハンドルが軽くなったが、ミルを振ってみると、豆が落ちていくせいか、またハンドルに手応えを感じた。10回ほど回すと、再びハンドルが軽くなり、これ以上振ってもハンドルにと応えが戻ることはなかった。

椅子を立ち上がり、キッチンに戻った。電気ケトルのお湯が沸くまでにはもう少し時間が必要だった。沸くのを待ちながら、コーヒーサーバーとドリッパーを手前に寄せ、フィルターをセットした。フィルターは少し角度を調節し、ドリッパーのサイズに合うようにした。

擦り終えたコーヒー豆はミルの下部に溜まっていた。ミルの下部を取り外し、コーヒーの粉をフィルターの中に入れた。少し山のようになっていたが、ドリッパーを揺らし、平らに均そうとしたが、手前側が少し上がっているようにも見えた。ちょうどその時、お湯が湧いたことを知らせるように、電気ケトルのスイッチが切れる音がした。

電気ケトルの方へ振り返り、ドリップポットを取り出した。電気ケトルの手前に置き、電気ケトルを持ち上げて、沸いたばかりのお湯をポットに、およそ8分目ぐらいまで注いだ。ポットから湯気が上がった。

ドリップポットを手に取り、再び振り返り、ドリッパーに向かう。ポットの重みを感じながら、脇を締め、ポットの注ぎ口の先を意識しながら、ポットを傾け、お湯を注ぎ始めた。ポットの先から少しずつお湯が流れる。しずくと流れる水との間ぐらい、粒になったしずくが連なり、数珠のように流れていく。フィルターの中にあるコーヒー豆の全体が濡れるように注ぐと、お湯が粉の間を染み渡り、フィルターを上の方から濃い茶色に染めていった。茶色の液体となったお湯がコーヒーサーバーの中に落ちた。

少し多めにコーヒーを落としたあと、お湯を注ぐのを止め、ポットを天板の上においた。もう一度振り返ると、食器棚を開き、ガラスの小鉢を2つ取り出した。ガラスの小鉢に手を伸ばしたかどうか、というところで、猫が足元に寄ってきて、いつものおやつをせがむように鳴き出した。

猫は相手にせず、ガラスの小鉢を冷蔵庫の前に持っていきながら、スプーンを引き出しから取り出した。冷蔵庫の上段からヨーグルトを取り出し、キッチンに置いた。まだヨーグルトは入れなかった。ヨーグルトから手を離すと、再びコーヒーの前に戻ってきた。猫はまだ鳴いている。

再びポットを手に取り、持ち上げ、脇を締め、注ぎ口の先に意識を集中しながら、お湯を垂らし始めた。フィルターの中心から円を描くように、徐々に外側へ広がりながら、時折、真ん中に戻りつつ、まんべんなくお湯を注いだ。お湯がコーヒー豆に行き渡ると、中心部が盛り上がり、それをお湯で崩しながら、それでも、あまり勢いを付けずにお湯を注ぎ続けた。お湯を粉がひたひたになるくらいに注いだ頃、少しお湯を注ぐ角度を戻し、お湯が落ちる量を調整した。水面が上下しないように注ぎ口の先に意識を保ちながら、円を描き、まんべんなくお湯が行き渡るイメージをしながらお湯を注ぎ続けた。

コーヒーサーバーの中にコーヒーが落ち、横に付けられた目盛りを100、200、300と順番に超えていく。300と400の間ぐらいに差し掛かった頃、お湯を注ぐのを止めた。ポットに残ったお湯はシンクの中に流して、ポットを最初に取り出した場所へ仕舞った。

ポットを仕舞っている間にもコーヒーはサーバーに落ち続け、やがて400の目盛りまで差し掛かった。ドリッパーをサーバーから持ち上げ、シンクの中に置いた。サーバーを手に取り、全体を回し、中のコーヒーが均一になるようにした。

体の向きを変えると、食器棚からマグカップを2つ取り出し、コーヒーサーバーの横に置いた。

取り出しておいたヨーグルトのところまで歩いていき、ヨーグルトをガラスの小鉢に盛り付ける。ヨーグルトは新品で、ビニールの蓋を剥がし、そばに置く。まっさらな白いヨーグルトをスプーンで掬い、3杯ずつ小鉢に盛り付ける。その後、スプーンでもう1杯だけ掬い、猫の食器の方へあるき出した。しばらく黙っていた猫が再び鳴きだし、あとを追ってきた。待てと言うが、聞くわけもなく、スプーンに乗っているヨーグルトを皿に盛り、ヨーグルトのところへ戻った。

我慢できなかった猫は、一目散にヨーグルトを舐め始め、程なく舐め終わった。まだまだ足らなさそうな表情でこちらを見つめていた。

冷蔵庫を開け、扉の一番上の段からきな粉を取り出した。チャックを開け、小鉢の中のヨーグルトの半径の半分ぐらいにかかるように振りかけた。

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